議院の自律権について
議院自律権とは、各議院が内閣・裁判所など他の国家機関や他の議院から監督や干渉を受けることなく、その内部組織および運営等に関し、自主的に決定できる機能をいいます。
今回は、この議院自律権を国政調査権や規則制定権等の権利に分解することをせずに、議院自律権と司法審査との関係を総論的に探っていきたいと思います。
① 議院自律権の存在理由
議院自律権は、三権分立をまっとうするために認められています。つまり、他院を含めた他の国家権力からの議院への影響力を一定程度排除することで、議院を立法権の担い手として明確に位置づけたのだと考えられます(私見)。
② 司法審査との関係
この「他の国家権力」には、当然ながら司法権も含まれます。そこで、司法権との関係が問題となるわけですが、判例は、警察法改正無効事件判決(最判昭和37・3・7)において以下のように述べています。
「同法(警察法)は両院において議決を経たものとされ適法な手続によって公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重すべく同法制定の議事手続に関する所論のような事実を審理してその有効無効を判断すべきでない」
これは、裁判所の審査権が及ばないと述べていると解されています。
③ 「裁判所の審査が及ばない」
では、どの「裁判所の審査が及ばない」あるいは「司法審査の対象とならない」という表現の意味はなんでしょうか。
これは、法律上の争訟にあたらない場合と同一の処理をせよ、ということでしょうか。
おそらく違います。
法律上の争訟にあたるかどうかは、司法権の発動要件であり、これが欠ければ訴えは却下されるべきこととなります。
他方、司法審査の対象とならない場合でも、法律上の争訟にあたる限り司法権は発動しています。司法権が発動している以上、裁判所は本案審理に入り、 実体判決を下す必要があります。ただ、議院自律権を尊重することによって、議院の判断を尊重し、その判断を前提とした司法判断をすべきということが「裁判 所の審査が及ばない」という表現の意味です。だから、司法権の限界に位置付けられているわけです。